top of page

「人が辞めるから会社が危ない」のではない。退職で“何が失われるか”を見ていますか?

執筆者の写真: astrocytejpn
astrocytejpn
8月7日
読了時間: 8分



次のようなお悩みありませんか?

・定年を迎える経営幹部がいる。

・現場を何十年も支えてきた熟練者も辞める。

その一方で、 ・物価や市場賃金は上がっているのに、会社には全社員をすぐ賃上げできる余力がない。

・若手や中堅まで辞め始めたら、会社はどうなるのか。


2026年8月9日、帝国データバンクから次のニュースが入りました。 『従業員「退職」で倒産、5年連続で増加 過去最多ペースで推移 「賃上げできず」倒産も発生』


これは、「従業員退職型倒産」と呼ばれ、今後も高水準で推移する可能性がある日本の現在地です。




これは、人事部だけに預けてよい問題ではありません。


実際に、経営者専用の問い設計AI【QYNE(クィン)】への同じような入力例です。


(入力典型例)

定年による経営幹部の退職、熟練者の退職、そして、すぐに賃上げできないため従業員の退職などによって倒産しないか心配だ

この不安を、そのまま「離職対策を教えてください」とChatGPTなどのAIに聞くこともできます。


しかし、それでは問題を狭く捉えすぎます。


このケースでQYNEが、最初に問い直すべとしたのは、


「何人辞めるのか」ではなく、「その人が辞めることで、会社から何の能力が失われるのか」


でした。




■「人手不足」ではなく「事業能力の喪失」と考える


経営幹部が一人辞める。

数字の上では「1名減」です。

しかし実際に失われるものは、1人分の労働力とは限りません。


その人だけが知っている、

  • どこまで現場で判断してよいのか

  • どの案件を社長まで上げるべきなのか

  • 問題が起きたとき、誰に相談すれば動くのか

  • 銀行、取引先、主要顧客とどのような関係を築いてきたのか

  • 社内の利害をどう調整してきたのか


といった「意思決定のインフラ」まで一緒に消える可能性があります。

熟練者も同じです。


マニュアルに書かれた作業手順だけではなく、

「この音は少しおかしい」「この顧客の場合は通常と違う」「この条件だと品質事故につながる」

という、経験によって形成された判断能力が失われます。


さらに、その穴を残った社員が埋めようとすれば、


重要人材の退職↓残存社員の負荷増加↓残業・不満の増加↓若手・中堅の離職↓さらに残存社員へ負荷集中


という連鎖が始まります。


会社を危険にするのは、最初の退職人数ではありません。


退職後に会社の中に残る「能力の空白」です。




■ 100人の仕事を、100人採って守ろうとしてはいけない


今回の事例では、ブログ記事用として「現在の人員=100」とした指数モデルで考えています。


ここでQYNEから生成された問いが導いた重要な視点があります。


それは、


「100人で行っている仕事を100人補充する」のではなく、「80〜90人でも存続できる事業構造へ変えられないか」


という発想です。


もちろん、80〜90という数字自体は分析用モデルであり、どの企業にも当てはまる目標値ではありません。


重要なのは考え方です。


人が辞める。

だから採用する。

採れない。

だから給与を上げる。

それでも辞める。

このループに入る前に、


そもそも現在やっている仕事を、すべて残す必要があるのか。


を経営として問い直す必要があります。




■採用より前に、6つの順序がある


今回の分析で導かれた順序は、非常に明快です。


1.守る — Protect


まず、「いなくなると会社が止まる人・技能・顧客関係」を特定します。


優先順位が高いのは、

  • 意思決定や統制を担う経営機能

  • 安全・品質・設備稼働に直結する技能

  • 主要顧客との関係

  • 他者が代替できない暗黙知

  • キャッシュ創出に直接関係する業務

です。


ここでの問いは、

「その人が明日いなくなったら、何が止まるか?」

です。


2.移す — Transfer


守るべき能力が分かったら、次はそれを人から人へ移します。

「退職前にマニュアルを書いてもらう」だけでは不十分です。


QYNEでは、承継を5段階で考えています。

・Observe:後継者が熟練者を見る。

・Explain:なぜそう判断したのかを言葉にする。

・Co-work:一緒に実行する。

・Reverse Shadow:後継者が主担当になり、熟練者が見守る。

・Certification:後継者だけで実行できることを確認する。


つまり承継の完成とは、「資料ができた状態」ではありません。


後任者が一人でも判断し、実行できる状態です。


顧客関係も同じです。


退職直前に「次からこの人が担当します」と紹介するのではなく、半年、1年前から二人で担当する。


人ではなく、関係そのものを移していく必要があります。



3.減らす — Simplify


ここが、経営者にとって最も決断の難しい部分かもしれません。

人が減るなら、仕事も減らす必要があります。


例えば、

  • 不要な会議

  • 多段階の承認

  • 二重入力

  • 過剰な帳票

  • 低採算商品

  • 顧客ごとの過剰な個別対応

  • 採算の合わない契約

です。


売上がある仕事を止めるのは怖い。


しかし、


「売上のある顧客」と「守るべき顧客」は同じではありません。


売上があっても、過大な人手を使い、特定の熟練者に依存し、品質リスクまで抱えているなら、その仕事を残すことで高採算事業まで止まる可能性があります。


守るべき雇用と、守るべきではない仕事を混同してはいけません。



4.外から補う — Supplement


すべてを正社員採用で補う必要もありません。


QYNEの分析では、

  • OB

  • シニア人材

  • 外部専門家

  • 業務委託

  • 同業連携

などを、6〜18か月程度の「橋渡し」として活用する選択肢も挙げています。


外部人材は、単なる人手ではありません。


次の体制を作るまでの「時間を買う」手段にもなります。



5.自動化する — Automate


AIやシステム化も有力です。


ただし、順序を間違えてはいけません。


人手不足だから大型DX。

これは危険です。

まず不要な仕事をなくす。

次に標準化する。

それでも残る反復業務を自動化する。


この順序なら、省力化投資は効きます。


逆に、複雑な業務を複雑なままシステム化すれば、会社に「新しい複雑さ」が加わるだけです。


6.それでも成立しないものから撤退する — Exit


最も厳しい判断です。


しかし、会社を存続させるという目的から考えれば、避けてはいけません。


QYNEの分析では、悪化シナリオの場合、

  • 拠点統合

  • 商品削減

  • 顧客選別

  • 外注化

  • 事業譲渡

  • M&A

  • 一部撤退

まで選択肢に入れています。


目的は「縮小すること」ではありません。


残すべき事業を残すために、何を残さないかを決めることです。




■「全社員を賃上げするか」という問いだけでは足りない


賃金は重要です。


しかし、賃金だけでこの問題を解こうとすると、経営上の別のリスクが生まれます。


一律のベースアップは、

  • 固定費として残る

  • キーパーソン依存をなくさない

  • 過重労働をなくさない

  • 上司や評価への不満をなくさない

  • ベテランの技能を会社に残さない

からです。


だから今回の分析では、一律大型賃上げを主戦略には置いていません。


代わりに、

限定報酬+仕事の削減+承継+マネジメント改善

を一体で考えます。


例えば、

  • 重要役割手当

  • 技能承継手当

  • 一時的なRetention Bonus

  • 後継育成手当

  • 多能工手当

などです。


ただし、ここには公平性という別の問題が生まれます。


だから「社長が残ってほしい人」ではなく、

その役割を失った場合、事業がどこまで止まるのか

という客観基準で対象を決める必要があります。




■最初の90日で経営がやること


QYNEの分析では、最初の30日を「止血」と位置づけています。


● 0〜30日

CEOは、

  • 会社を止め得る重要役割を特定する

  • 退職予定幹部との承継協議を始める

CFOは、

  • 資金繰り

  • 顧客別・商品別採算

  • 人時採算

を見る。

現場では、

  • 一人しかできない仕事

  • 止められない業務

  • 安全・品質・設備上のリスク

を洗い出す。

人事は、

  • 退職予兆

  • 後継候補

  • 重要人材への限定的なRetention策

を確認する。


●31〜90日

次は「人を増やす」ではなく、「仕事を減らせないか」を検証します。


会議、承認、帳票、個別対応、不採算商品、不採算契約。

経営が自ら「やらなくていい仕事」を決めます。

そして90日ごとに、

今の事業構造のままで本当に存続できるのか

を取締役会・経営会議で再判断する。

これが人事施策と事業継続計画の違いです。




■人材危機を、人事部だけの問題にしてはいけない


このケースで、最も重要なのはここだと思います。


経営会議の問いを、

「何人辞めそうなのか」

から、

「何が失われたら、この会社は止まるのか」

へ変える。


そうすると、議論の内容が変わります。


採用人数だけではなく、

  • 守るべき事業

  • 守るべき技能

  • 守るべき顧客

  • 投資上限

  • 赤字を許容する期間

  • 縮小する仕事

  • 撤退する条件

まで経営課題として見えてきます。


つまりこれは「離職対策」ではありません。

会社がこれからも事業を続けられる構造をつくる経営課題です。




■ 経営者が見るべきなのは「人数」ではなく「能力」


今回の問題意識は、

「退職が重なって、会社が倒産しないか心配だ」

という一文から始まりました。


しかし問いを深くしていくと、本当に考えるべきテーマは変わりました。


退職者を何人補充するかではない。

退職によって失われる事業能力を特定し、それを守り、移し、必要なら事業そのものを小さく作り直せるか。


そこが経営判断になります。


今回の分析を一行にすると、

Protect → Transfer → Simplify → Supplement → Automate → Exit

です。


守る。移す。減らす。外から補う。自動化する。それでも成立しないものは撤退する。


採用は最初ではありません。


そして成功とは、従業員数を元に戻すことでもありません。


重要業務を止めず、技能と顧客関係を次世代へ移し、キャッシュを守りながら、より少ない人的依存で経営できる会社へ変わること。


人材不足が常態になる時代ほど、経営者に必要なのは「どう採るか」だけではなく、


「誰がいなくなっても、会社が止まらない構造をどうつくるか」


という問いなのではないでしょうか。




■QYNEについて

QYNE(クイーン)は、経営者の問題意識を、生成AIから意思決定レベルの答えを引き出す「最適な問い」へ変換する、経営者専用の問い設計AIです。


「何となく危ない気がする」「何から考えればいいのか分からない」「AIに聞いても一般論しか返ってこない」


そんな、まだ整理しきれていない経営課題から、判断軸・制約条件・シナリオ・実行計画まで含む問いへ組み直します。


今回のような人材・承継・事業継続の問題も、自社の実数を入れれば、一般論ではなく自社固有の経営判断へ近づけていくことができます。


実際に、今回のケースもQYNEでお試しください。より詳細な分析から次の一手まで発見することができます。



コメント


bottom of page